ずっと作り続けること
「旅とお酒」展という展示をしました。 今日は残り3日を残す金曜日ですが、この一週間で、いろいろなことを感じ考えました。
そして、この先もずっと絵を描き それを発表し続けよう! と決めました。
ライフワークというものなのか 気長な趣味なのか わからないですが、とにかくずっと作って描いてそして発表しようと思います。
今日はそのことを整理して書き記しておこうと思います。
ずっと作りたかった。立場にコンプレックスがあった。
美大を卒業して、広告代理店やデザイン事務所ではなく、サラリーマンとして事業会社のデザイン部門に進んだぼくは、「クリエイティブの本流にいない」ことにどこか劣等感を感じていました。
その反動で、20代の頃はいろいろなコンテストに応募したり、絵も描き続けていました。
コンテストの結果は、いきなり準グランプリのびっくり入賞もありましたが、その後は華々しいものはなかったです。
知らないうちに年齢制限で応募できるコンテストもどんどんなくなっていきました。さらには自分の同い年くらいの人が審査員をするようになったりもして、あ、ひとつタームが終わったな と感じました。
サラリーマンとして、なんとか「作る仕事」のデザイナーになったぼくですが、歳を重ねる中で、実制作することよりも それ以外の仕事の量が増えていきました。
仕方がないというよりは、それがおもしろかったし 向いていたと思えたから、嫌ではなかったです。
//デザイン制作をするチームの長になって以降、メンバーの育成や評価、人材採用などもやるようになり、部下も増えました。さらには、広告宣伝、ブランディング、CSR、社内活性化コミュニケーション、コンテンツの企画、事業管理。。作ること以外の仕事の範囲がどんどん増えたのです。
そしてその後、新規事業開発部長にもなり、シリコンバレーやらVCやらオープンイノベーションやら、およそ作ることと関係ない世界の仕事もすることになります。
そんな渦中で、ふと思うところがあって、カンヌ広告祭に行きました。
僕が賞候補になったわけではなく、完全な視察というか見学です。
カンヌ広告祭は、言わずもがなの世界最高峰のクリエイティブの祭典です。(僕が行った年からカンヌクリエイティブフェスティバルと改名した。)
圧倒的な世界レベルのクリエイティブや考え方に触れることができて、打ちのめされると同時に、自分が作り手そのものでないことに「なにをやっているんだろうなー」という落胆。
でも、実制作以外のクリエイティブに携わる仕事の幅が、どんどん拡張していることにも気づきました。
カンヌ見学から戻って以降、会社では「制作以外のクリエイティブの幅を広げる」ような仕事の仕方をするようになりました。(ここは長くなるので割愛します。オープンイノベーションの中で「ものを作る感覚」は想像以上に活かせました。)
また「やっぱりクリエイティブは素敵だ、楽しい!」と思えたことで、ぼく個人の創作も、やっぱりもっと発表していこうと思ったのです。
ずっと描いて作っていた。
かつてのコンテスト応募レースで賞を獲り損ねたぼくですが、ずーっと個人的なものづくりは続けていました。 人に見せるものではなく、全くの個人制作として、旅行先でコラージュして絵や雑感をかくことをずっと続けていました。
ただただ そういうことがとても好きだったのです。
旅行から帰って来てから、そのスクラップブックをもとに絵を描いたり、写真を貼ったりしました。
誰に頼まれるでもなく、見せるものでもないコラージュしたスクラップブックは、20年で30冊ほどになりました。
発表することで予想外のフィードバックがあり、それは楽しい。
2013年、青山にあった旅の本屋さん「BOOK246」で、そのスクラップブックを展示する機会がありました。 https://setsu.themedia.jp/posts/4379793/
自分のために作ったそのスクラップブックと文章を、食い入るように見る人の多さに驚きました。(上の写真) 内省的な文章で恥ずかしかったですが、今更隠せない!と、そのままにしました。
このときのみんなの反応の多様さに、予想外というか、すごくびっくりしたのを覚えています。
その後も、代々木上原のパン屋さんのカフェ「ルシァレ」や、伊勢丹立川でも作品発表の機会がありました。
初めて絵が売れたときは、ものすごくびっくりしました。
誰かに頼まれた「デザイン」ではなく、好き勝手に描いた「絵」が売れたという事実。陶器のように使途のあるものでもない 絵が売れた!という事実に、40歳を超えてもまだびっくりする驚くことがあるんだな、と感動しました。
こうして、展示することは いろいろなフィードバックを得られ、自分にいろんな変化が起こる と、一連の発表の中で気づきました。
稼ぐためでない個人的な創作を 卑下するのをやめる。
プロとしてデザイン制作に集中する職業ではなくなってしまった自分が、手慰みというか創作欲求を収めるために、自己満足として始めたのが、コラージュと描くことでした。
とくにコンテストに出すわけでもなく、発表機会も無かったのに、ただただ好きで楽しくて作っていた。
それを不意のきっかけで発表し、思わぬフィードバックがあって驚いたこと、そしてなにより とても楽しかった。満足感があった。
その作品は、必死に徹夜して作ったり、泣きながら作ったものでもない、そんな気楽な制作物が、はたしてクリエイティブなのか? なんとなくそう自分とその作品を卑下する感覚もありました。
ですが、それよりも、展示を見た人からのいろいろな反応や、「こんなことしませんか?」と誘ってもらえたことが、とても楽しくうれしかった。
さて、
今回、一緒に展示をしてくれた阿部武史くんは、専業画家です。30年近く絵を描き続け、毎年発表しています。
https://bayann222.wixsite.com/acquerello
そんな彼と一緒に、日曜画家のぼくが展示をするのはおこがましいと、ずっと言えない・出来ない でいました。
でも、今回、ぼくが、会社勤めでなくフリーランスになったからなのか、自然に「一緒にやりたい」と言えました。
ぼくは、彼ほど集中して丁寧に絵を描くような感じではないし、仕上がりも雑だと思います。
彼が30年突き詰めてきた矜持とは比較にならないと思います。
それでも一緒に展示がしてみたかった。
今回、彼がぼくと一緒に展示をしてくれたことに、とても感謝しています。
プロ画家でもなく、クリエイティブ職人でもない自分ですが、作品を発表することに抵抗が無くなってきました。 今も少し気後れする時もあります。世の中にはすごい作家がたくさんいるので。
でも、今更そんなことを気にするより、どんどんやってみた方が健全だと思えました。
今回、展示を見てくれた人の反応を見るにつれ、絵やカレンダーが売れるにつれて、だんだんと自分の創作を卑下するのをやめることができました。
僕が作る 旅のコラージュや絵は、アートを革新しないだろうし、世界も変えないでしょう。大儲けもしないでしょう。
ただただ 好きなように作り、発表し、そこで人と話すことは、とても楽しいのです。
それを気に入ってくれたり、気持ちが動く人がいれば、それはそれでうれしいのです。
別に若くなくても好きなことをしてもいい。何歳でもはじめてもいいし、何歳まで続けてもいい。
今回、展示して、そんなことにあらためて気づくことが出来ました。
これからも作り続け、発表していこうと思います。
0コメント