藤田嗣治展
いままでちゃんと藤田嗣治を観たことがなかったので行ってみた藤田嗣治展。
ほんとに行ってよかった! 藤田の一生を振り返ることができる素晴らしい展示でした。
一生をとおしてさまざまなテーマで絵を描いた、作家らしい作家だと知りました。
藤田は、白い女性像や猫の絵で人気ですが、その一生は、何人もの女性との生活が転機となっています。このあたりは、芸術新潮に詳しいので読むとよりわかります。展示のあと、美術館の図書室でこの号を読んで、詳しく知ることができました。
藤田は最初の妻、鴇田(ときた)とみをはじめ、フェルナンド・バレー、リュシー・バドゥー(愛称ユキ)、マドレーヌ、君代と、生涯を通して5人の女性と暮らした
軍医の息子として生まれた藤田は、学生時代に当時としては珍しい恋愛結婚をし(実際は籍入れていないが)、その後女性(とみ)を伴うことなくパリに行きます。父との3年の約束で仕送りをもらいながらの生活で、何度も妻を呼ぶものの実現しません。戦争もあり送金が滞り 困窮する中、しかし帰国することなくヨーロッパに留まります。このとき正式に離婚をし、自活を宣言します。
その時期に、画業に打ち込む中 生まれたのが、この白い画風です。このころから付き合い始めた女性と結婚し、その縁もあり一気に立場を確立、時の人となります。世間的に有名なのはこの時期の絵です。
しかし、その後女性とは別れ、付き合い、また別れ(フェルナンド・バレー、リュシー・バドゥー(愛称ユキ)) 別の女性(マドレーヌ)と南米旅行に行き、ここでたくさんの絵を描きます。このころの絵がほんとうに素晴らしく、初めて観たのですが、藤田嗣治という画家をはじめて発見した気がしました。その後、日本に妻を伴い帰国、一緒に住み始めます。また、アジア各地と東北や沖縄など日本各地でも絵を描きます。これまたすばらしい。始めて観ました。
その後の日本の戦争時代、戦争画を描くのですが、絵のテーマは気分がいいものではないですが、その画風は鬼気迫るものがあり、純粋に絵として心に訴えかけるものがあります。驚きました。
戦後は戦争犯罪人呼ばわりされ、実際は戦犯にはならないのですが、日本画壇とそりが合わなくなりアメリカに拠点を移します。戦中に結婚した日本人女性(君代)が最後の妻となるのですが、アメリカに呼び寄せ、また、その後フランスに移り住み、フランス国籍を取得します。
フランスでは郊外に家を買い、教会を建て、売るための絵ではなく自分のために宗教画をたくさん描きます。これまた素晴らしい。そして、このころ作った陶器や家具、そのほかのいろいろなものも、とてもチャーミングでいい雰囲気なんです。
このフランス郊外で亡くなるのですが、フランスでの活動に関しては、まだまだ研究中だそうです。
今回の展覧会は、単純に絵を見るだけでも十分感動しますが、背景を知っているとよりグッと来ます。ぼくは背景が知りたくなって、展覧会みた後に文献を読みましたが、それもまたいいと思います。
また、猫や女性の白い絵だけでなく、すべての時代の絵がまとめてみられることも、素晴らしいです。苦悩の学生時代や、パリ以降の南米旅行と日本在住時代、さらには戦争画家時代、そして日本を去ったあとのアメリカ時代とフランス国籍時代。
とても人間味ある人物で、まさに画家だと感じました。
藤田嗣治展 http://foujita2018.jp 東京都美術館で 2018年10月8日まで
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