感情を動かすもの、その時代にしかない輝き
上田義彦の写真展で考えたこと
きのう、上田義彦の写真展を訪れた。
圧倒されるほどの作品群だった。とりわけ、広告用に撮影されたサントリー烏龍茶のための中国での写真シリーズは、空気そのものを写し取ったような雰囲気があり、今見ても新鮮で素晴らしい。もう二度とない時代と世界。(あ、当時にも もうすでになく、脚色で空想なんだけどね。)
あれほどの時間とお金をかけて「広告写真」を撮ることは、もう難しいのかもしれない。
自分がデザインを学んでいた学生時代に目にした広告だからこそ強く残っているのかもしれないが、それ以上に「今の時代の写真とは何か」という問いを改めて投げかけられた気がした。
90年代キムタクドラマの輝き
最近、木村拓哉のドラマを続けて二つ見返した。以前から役者としてのキムタクが好きなのだが、最近の作品は、「信長」も「グランメゾンパリ」もピンとこなかったので、印象に残っていた「ギフト」を見ようと思ったのがきっかけ。
「ギフト」は、出演陣が豪華で、それぞれの演技が生き生きと光り、ストーリー展開も90年代ならではの鋭さがあった。木村拓哉が役者として最も内面に迫っていた時期の作品ではないかと思う。
もうひとつは「ロングバケーション」。最終回の視聴率は36.7%、まさにテレビドラマの黄金期を象徴する作品だ。ベタなラブストーリーではあるが、人物の心の揺らぎや説明できない感情を描き、しかも展開や伏線に無理ない納得感もある。視聴者の反応を受けてシナリオが途中で変更されたというのだから驚かされる。
回を重ねるごとに俳優たちの演技や雰囲気が変わっていく。第一話と最終話では、まるで別人のように凛としている。評判が彼ら自身を変化させたのだろう。撮影方法も大胆だった。クレーンを使ったワンカットなど、当時としては尋常じゃない手間と予算が注ぎ込まれている。
二つのドラマに共通しているのは、時代の感覚を鋭くすくい取り、新しいコトバや流行を作るほどの「面白いものを作ろう」という気概が宿っていることだ。エンターテインメントとしての充実ぶり。ポジティブな時代の空気がある。
もちろん、その裏には長時間労働や無理もあったのかもしれない。
こうしたドラマはもう二度と作れないだろうし、世間全体がテレビドラマに熱狂することもないだろう。
では、こんな作品を見て育った私たちの世代は、今、何を作るべきなのだろう。
万博のパビリオンで
万博で最も印象に残ったのは、河瀬直美のパビリオンだった。
そこには最新テクノロジーも未来的な演出もない。一見すると懐古的ですらある。けれど、その場で偶然生まれる一時間の体験は、むしろ最も「今の時代」を映し出していた。
インスタレーションでも映画でもなく、パビリオンという形式だからこそ成立する表現。その不思議な魅力に惹かれた。でも、もしこれが「今作るべきもの」なのだとしたら——少し切なさを覚える。答えがないからだ。答えがなくて考えさせられ、突き放される。
多様性、「世界に一つだけの花」が生み出す 自己責任、格差。
理解できる人だけがわかる世界。わからないあなたは、そういうこと。
今しか作れないもの、普遍的なもの
私たちが今作るべきものとは何だろう。
「今しか作れないもの」とは何か。
そして、人の心を震わせ続ける「普遍的なもの」とは何なのか。そんなのあんのか?
そんな問いにとらわれ、気づけば自分の絵筆が止まってしまうよ。
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